教室紹介

ご挨拶

患者さんの体の負担を抑えつつ、最大限の治療効果を発揮する“低侵襲脳神経外科手術”の実現に日々努力しています

主任教授 辛 正廣

 2021年5月1日より、脳神経外科講座教授に就任いたしました 辛 正廣(しん まさひろ)と申します。私が脳神経外科医となることを志し、修行を開始した当時は、脳神経外科の手術を、一日も早く修得して、一人前の外科医となりたいとばかり思っていました。しかし、ある時、ふと、「外科医の技量のみで患者さんの運命が決まってしまうのは、どうなのか」と考えるようになりました。こうして、先端医療技術を駆使することで、いかに難しい手術を“簡単”にできるようにし、手術成績のばらつきをなくす、そうしたことを実現するための研究に専念してまいりました。現在までに、私がたどり着いた最終的な答えは、脳腫瘍の分野では神経内視鏡による手術であり、また、脳血管障害の分野では、脳血管内治療であります。
 当院には、私がセンター長を務める、下垂体・内視鏡手術センターがあります。下垂体腫瘍や頭蓋咽頭腫、髄膜腫などの頭蓋底腫瘍をはじめ、頭蓋底脊索腫や軟骨肉腫などの悪性腫瘍に至るまで、他院で治療が難しいとされる患者さんの治療に、積極的に取り組んでおります。
 また、高度救命救急センターには、脳卒中や頭部外傷をはじめとした救急対応を必要とする患者さんが多く来院されます。高い専門性を有した脳神経外科スタッフと共に、多職種間でのチームワークを最大限に活用して、様々な脳神経疾患の治療に取り組んでいきたいと考えております。これからも、治療を受ける患者さんの体の負担を抑え、一日も早い社会復帰を目指した“低侵襲脳神経外科”の実現を目指し、日々、診療に努めていく所存であります。

 脳卒中・血管内治療部門の教授であり、当院の脳卒中センター長を務めております、庄島 正明(しょうじま まさあき)です。 私達の脳神経外科の特色は、患者さんの体の負担を抑えつつ、最大限の治療効果を発揮する「低侵襲脳神経外科」です。脳血管内治療は国内では1990年末ごろから発達し始めましたが、私は、2004年頃よりこの治療に携わるようになりました。現在では、脳動脈瘤や頸動脈狭窄症、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻など、脳卒中の原因となりえる様々な病態の治療を積極的に行っています。また、一般的に治療が難しいとされていた、頚動脈の慢性閉塞を再開通させる方法や、太い血管から急角度で分岐する細い血管にカテーテルを誘導する方法についても、開発を行ってきました。2010年頃からは、多くの専門医の指導にも携わるようになり、現在までに2500以上の症例の治療に携わってきました。
 また、さらに治療の精度を向上すべく、治療が困難な脳動脈瘤の治療を可能にするために、コンピューターシミュレーションを用いた血流解析を行ったり、カテーテル治療の安全性を向上させるために術者がどこに注意を払いながら手技を行っているかをアイトラッキングでモニタリングしたり、カテーテル技術の習得を促進するための血管モデルを用いたりといった臨床研究にも尽力しています。
 これからも、患者さんの体の負担を最小限に抑えた「低侵襲脳神経外科」の発展と普及に携わっていきたいと考えております。

教授 庄島正明